はじめに
産業廃棄物を「業として」収集・運搬する場合、原則として産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
ところが実務の現場では、
- 「自社で出たゴミを運んでいるだけ」
- 「元請の指示で運んでいるだけ」
- 「建設業許可があるから大丈夫だと思っていた」
といった理由で、無許可のまま収集運搬を行っているケースが後を絶ちません。
本記事では、
- どんな場面で許可が必要になるのか
- 逆に、許可が不要なケースは何か
- 判断を誤りやすいポイント
- 許可取得後に注意すべき実務
を、できるだけ噛み砕いて解説します。
産業廃棄物収集運搬業許可が必要になる場面とは
最初に全体像を整理します。
判断の軸は、次の3点です。
- 運んでいるものは産業廃棄物か
- それを「業として」行っているか
- 他人の廃棄物を運んでいないか
このいずれかに該当すると、
**「許可が必要になる可能性が高い」**と考えてください。
第1章:産業廃棄物収集運搬業許可とは?
1-1. 産業廃棄物と一般廃棄物の違い
まず、最も重要な前提です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 一般廃棄物 | 家庭ゴミなど、日常生活に伴って出る廃棄物 |
| 産業廃棄物 | 事業活動に伴って発生する廃棄物(法律で20種類指定) |
建設業・製造業・解体業などで出る、
- コンクリートがら
- 木くず
- 廃プラスチック類
- 金属くず
これらはすべて産業廃棄物です。
1-2. 産業廃棄物処理法における位置づけ
産業廃棄物は、排出 → 収集運搬 → 処分という流れで処理されます。
このうち、
- 他人の産業廃棄物を
- 収集・運搬する行為
を業として行う場合に必要なのが、産業廃棄物収集運搬業許可です。
1-3. 「収集運搬」とはどこまでを指すのか
「収集運搬」とは、
- 廃棄物を積み込む
- 車両で移動させる
- 処分場や保管場所へ運ぶ
までの一連の行為を指します。
自分で運転しているかどうかは関係ありません。運搬行為そのものが対象です。
第2章:産業廃棄物収集運搬業許可が必要なケース・不要なケース
2-1. 許可が必要となる典型例(元請・下請・自社運搬)
結論として、次のような場合は許可が必要です。
- 元請として他社の廃棄物を運ぶ
- 下請として運搬のみを請け負う
- 排出事業者から依頼を受けて運ぶ
特に多いのが、
**「建設工事の中で出た廃材を下請が運ぶケース」**です。
この場合、下請であっても許可は必要です。
2-2. 許可が不要となる例と勘違いしやすいポイント
一方、次のようなケースでは許可が不要です。
- 自社で発生した産業廃棄物を
- 自社の責任で
- 処分場まで直接運ぶ場合
これを**「自社運搬」**といいます。
ただし注意点として、
- 元請の指示で運んでいる
- 名義上は自社だが実態は他社の廃棄物
この場合は、自社運搬とは認められません。
第3章:産業廃棄物収集運搬業許可の主な要件
3-1. 講習会(収集運搬課程)の受講要件
申請には、
公益財団法人が実施する講習会の修了が必須です。
- 新規:収集運搬課程
- 更新:更新講習
受講枠は限られているため、
早めの予約が実務上の重要ポイントです。
3-2. 欠格要件と法人・役員に関する注意点
次に重要なのが欠格要件です。
- 法人だけでなく
- 役員全員
- 主要株主
が対象になります。
過去に、
- 廃棄物処理法違反
- 無許可営業
- 一定の刑事罰
があると、許可が下りません。
3-3. 車両・容器・施設に関する要件
実務でよく問題になるのがこの点です。
- 車検証の名義
- 使用権限(リース可)
- 表示(会社名・許可番号)
「とりあえずトラックがある」だけでは足りません。
3-4. 経理的基礎・財務状況の考え方
都道府県によって差はありますが、
- 債務超過
- 著しく不安定な財務状況
の場合、補足資料や説明を求められることがあります。
第4章:産業廃棄物収集運搬業許可の申請手続きと流れ
4-1. 都道府県知事許可と政令市許可の違い
運搬する区域ごとに許可が必要です。
| 運搬区域 | 必要な許可 |
|---|---|
| 都道府県内 | 都道府県知事許可 |
| 政令市内 | 政令市長許可 |
複数エリアをまたぐ場合は、複数許可が必要です。
4-2. 必要書類と申請までの実務フロー
大まかな流れは以下のとおりです。
- 講習会受講
- 車両・体制整備
- 書類作成
- 申請提出
自治体ごとのローカルルールが非常に多いのが特徴です。
4-3. 申請から許可までにかかる期間と費用
目安として、
- 期間:2〜3か月
- 役所への新規手数料:81,000円
ただし、
書類不備があると簡単に数週間延びます。
第5章:許可取得後に必要な義務と実務上の注意点
5-1. 契約書・マニフェスト管理の重要性
許可取得後、最も重要なのがここです。
- 委託契約書
- マニフェスト(紙・電子)
これらの管理不備は、即行政指導・処分対象になります。
5-2. 許可内容変更・更新手続きの注意点
- 車両変更
- 役員変更
- 商号変更
事前届出が必要なものが多く、放置は危険です。
5-3. 無許可・違反時のリスクと罰則
無許可営業の場合、
- 5年以下の懲役
- または1,000万円以下の罰金
と、非常に重い罰則があります。
第6章:産業廃棄物収集運搬業許可は行政書士に依頼すべきか
6-1. 自分で申請する場合のつまずきやすいポイント
- 自社運搬の誤解
- 書類の自治体差
- 欠格要件の見落とし
ここで失敗するケースが非常に多いです。
6-2. 行政書士に依頼するメリットとサポート内容
- 許可要否の事前判断
- 書類作成・事前相談
- 許可後の継続サポート
「必要かどうか分からない段階」での相談が最も効果的です。
おわりに
産業廃棄物収集運搬業許可は、取って終わりではなく、守り続ける許可です。許可取得はスタート地点にすぎません。
- 正しい判断
- 継続的な法令遵守
- 実務への落とし込み
これができてこそ、安心して事業を続けられる体制が整います。
「自分のケースは大丈夫だろうか?」そう感じた時点で、一度立ち止まって確認することが、最大のリスク回避になります。
尾西行政書士当事務所では、産業廃棄物許可申請のご相談を承っています

